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Sclaps KOBE

神戸に関連する/しない新聞記事をスクラップ。神戸の鉄ちゃんのブログは分離しました。人名は全て敬称略が原則。

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http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20101129/217325/
重村智計「ニュースを斬る」2010/12/01(水)
北朝鮮軍が砲撃に踏み切った真の理由は石油の払底

■米韓軍は北朝鮮軍の崩壊を狙う

 北朝鮮は2010/11/23、北朝鮮からわずか12kmしか離れていない、韓国領の延坪島を砲撃した。この砲撃で、韓国海兵隊の兵士2人と民間人2人が死亡し、南北関係と米朝関係の緊張が高まった。なぜ、北朝鮮は民間人の居る島を突然砲撃したのか。この背景には、石油が底を尽き崩壊に直面する北朝鮮軍の危機と、強硬派軍人の台頭、軍内部の主導権争いがある。また、中国による6カ国協議主席代表の緊急会合の提案は、国連安保理での問題処理を回避するための作戦であった。
■米韓軍の常識:北朝鮮軍が使える石油はわずか30万トン

 北朝鮮軍には、もう石油が無い。これが、今回の事件の軍事的背景である。北朝鮮の軍は、年間どのくらいの量の石油を使用できるのか? 想像できないほど少ないのだ。日本ではこの事実を、専門家はもちろん政治家、外交官もまったく知らない。これを知らずに砲撃事件を考えると、判断を誤る。

 いっぽう、韓国軍と在韓米軍の幹部の間では、これは常識である。韓国軍と在韓米軍の司令部はこれを正確に把握しているから、2010年7月以来、軍事演習を断続的に継続してきた。これは、北朝鮮軍に石油を消費させ、干上がらせて軍事力を低下させる作戦であった。この作戦が、成果を上げたことになる。

 北朝鮮の軍は、年間わずか30万トンの石油しか使用できない。これがいかに少ない数量かは、石油を扱ったことのない人には実感できないかもしれない。例えば、成田空港で1年間に使用するジェット燃料の量は、380万トンである。日本の自衛隊が、1年間に使用する石油は150万トンである。また、日本の都道府県で石油消費量の最も少ない自治体でも200万トン弱である。北朝鮮の石油確保量は、最大で年間80万トン程度だ。

 こうして見ると、北朝鮮軍が保有する石油が、いかに少ないかを理解できるだろう。これは、ウソではなく本当なのだ。どうして分かるのか? 北朝鮮が中国から輸入する年間の原油量は、約50万トンである。これは、事実上中国の援助である。本当は代金を払う約束だが、払えないので支払いが遅れている。中国は、北朝鮮が市場価格で代金を支払わないと、これ以上の量は供給しない。

 中国の大慶油田で採れた50万トンの原油から、軍事用の石油はどのくらい生産できるのか? わずか30%である。つまり、ガソリンや軽油、ジェット燃料など、軍用に使える石油製品は15万トンしか生産できないのだ。この他に、ロシアから20万トン前後の石油を輸入している。外貨が無いから、これ以上は買えない。つまり、北朝鮮軍が使える石油は年間30万トン程度にすぎないのだ。備蓄もあるが、100万トン程度と言われる。備蓄施設は、小規模だ。

■米韓軍が演習を行えば、北朝鮮軍は石油を使わざるを得ない

 だから、北朝鮮軍を疲弊させ、軍事力と士気を低下させるには、軍用石油を枯渇させればいいのだ。それを知っている韓国軍と米軍は、韓国海軍哨戒艦への爆撃の報復として、軍事演習を継続した。韓国と米軍が軍事演習をすると、北朝鮮はそれを「同国を攻撃する口実」だと考える。だから、北朝鮮も同じように軍事演習を行い「侵略」に対峙せざるを得なくなる。戦闘機を飛ばし、艦艇を走らせ、戦車を動かすと、たちまち石油は底をつく。

 韓国軍と米軍は、2010年7月から年末までに10回の軍事演習を計画し、実施している。さらに来年2011年も、多数の演習を計画している。これが続くと、北朝鮮軍は石油ばかりでなく軍用の食料、装備品も事欠くようになる。軍崩壊の危機に直面するのだ。

 この危機を避けるため、北朝鮮は韓国に軍事演習の中止を呼びかけた。しかし、韓国軍と在韓米軍は応じなかった。このため、10月には今回の延坪島より北にある白翎島の沖合に砲弾を落とすと「警告」した。しかし、韓国側は、これも受け入れなかった。

 北朝鮮軍がこの“石油危機”を回避するためには、米軍と韓国軍の演習を中止させるしかない。その最後の手段として、民間人が住む島の攻撃という手段に出たのだ。北朝鮮軍は、民間人に被害が出るのを恐れて米韓軍が演習を取りやめる、と読んだのだろう。

 だから、北朝鮮軍の行動はしかたがない、と言っているのではない。事件の背景にある真実を、知ってもらいたいために、説明したのである。つまり、北朝鮮がどれほど深刻な危機に直面しているか、北朝鮮に対する制裁が効果を生んでいる事実を説明したのである。こうした現実を無視し、あるいは無知で勝手な分析や解説を行うのは危険である。国際問題の判断を誤るからだ。
 専門家やメディアは、「後継者の成果づくり」や「瀬戸際外交」を背景として説明している。そうした背景も、ないわけではない。だが、直近の主要な原因ではないのである。誤った判断や分析、観測は外交や国家の運命を誤らせる。根拠の無い推測や、小説まがいの無責任な判断を示してはいけない。

■キーパーソンは金英哲・軍偵察総局長

 今年になって、北朝鮮は韓国海軍哨戒艦撃破事件や、今回の砲撃事件のような危険な軍事攻撃を行っている。これを指揮しているのは、金英哲・軍偵察総局長であるといわれる。彼が、2009年秋に偵察総局長に就任して以来、北朝鮮の危険な行動が続いている。その背景には、軍の主導権を巡る、呉克烈・国防委副委員長との軋轢があると観測されている。北朝鮮を一枚岩の「理想国家」と見るのでなく、内部対立があったり計算間違いをする現実の国家として観察し、よりリアリティーある分析と解説をすることが重要である。

■中国の6カ国協議会合提案は国連安保理潰し

 中国は、2010/11/28日曜日の夕方に突然、「6カ国協議の首席代表による緊急会合」を提案した。これについて、多くのメディアは「北朝鮮の孤立回避」や「中国の外交攻勢」と報じた。確かに、中国の外交力が存在感を失っているのも事実である。だが、中国の目的はそれだけなのだろうか。

 中国は、国連安保理での北朝鮮問題処理を「妨害」する作戦に出たと考えるほうが真実に近い。中国は、28日の日曜日になぜこうした発表を行ったのか?

 実は、日本時間28日夜はニューヨーク時間で28日朝である。28日までのおよそ5日間、米国は感謝祭の大型連休であった。連休明けの29日から、ニューヨークの国連安保理では、「北朝鮮の砲撃事件を安保理で扱うか」をめぐる安保理理事国の協議と根回しが始まる。この協議と安保理での問題討議を避けるために、中国は動いたのだった。

■北朝鮮を叱れない中国:かつて鄧小平は厳しく臨んだ

 中国が提案した「6カ国協議緊急会合」に関係諸国が合意すれば、国連安保理での協議を先延ばしできる。「関係6カ国が話し合っているので、安保理の協議はしばらく延ばしてほしい」と主張しようとしたわけだ。

 国連安保理で問題が協議されれば、北朝鮮非難決議や新たな制裁が採択される可能性が決して小さくない。北朝鮮による砲撃は休戦協定違反であり、かつ、国連憲章にも違反するからだ。中国としては、こうした決議や制裁を阻止するのはなかなか難しい。無理押しすると、中国が国際社会で孤立しかねない。何よりも、中国は朝鮮問題における外交力と指導力を失いかねないのだ。

 国連安保理の常任理事国である中国は、決議に反対する「拒否権」を保持している。中国が拒否権を行使すれば、非難決議や制裁は採択されない。だが、中国はこれまで、朝鮮問題で拒否権を使用したことは無く、使用するつもりもない。そのいっぽうで、非難決議や制裁決議を採択させたくもない。中国外交は、難しい立場に立たされたのである。

 この困難な外交的立場が、中国に「6カ国協議緊急会合」を提案させたのだ。この事実は、中国の指導部の弱さを物語っている。本来なら、中国は北朝鮮の危険な行動に怒り、北朝鮮にはっきりと物を言うべきだ。国際法違反なのだから。

 かつて鄧小平・国家主席は、韓国の全斗煥大統領を北朝鮮がビルマで暗殺しようとした際に、きわめて厳しい態度で臨んだ。ところが、今の中国指導部は北朝鮮を叱ることができない。指導力が無いのか。あるいは、北朝鮮を弁護する中国の軍部や強硬派に配慮しているのだろうか。中国指導部の力不足が、北朝鮮を甘やかしているのだ。

 日本政府や、民主党の政治家の中には「中国に頼む」「中国を動かす」と発言する人がいるが、余り頼りにならないというのが、中国の現実である。
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