Sclaps KOBE
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【関西の議論】神戸「復興のシンボル」パンダの行方 中国との「ディール」は成功するか <産経WEST 2018/07/24 11:00>を編集
神戸から人気のジャイアントパンダがいなくなる、との恐れが渦巻いている。中国側が2年後に貸与期間の満期を迎える神戸市立王子動物園のメス「タンタン(旦旦)」について、契約の延長を明言せず、別のパンダの貸与にも難色を示しているからだ。タンタンは1995年の阪神淡路大震災で被災した神戸に、復興のシンボルとしてやってきた。しかし、その後の相次ぐトラブルなどを口実に、中国側が揺さぶりをかけてきたのだ。中国の「外交カード」ともささやかれるパンダの貸与。その「ディール」(取り引き)を神戸市は成功に導くのか。
■中国に直談判
2018/05/16、中国・北京のホテルの会議室に、日中友好神戸市議連盟会長の平野昌司(自民党)ら神戸市議6人が顔をそろえた。中国野生動物保護協会の幹部らに新たなパンダの貸与を直談判するためだ。
「パンダは子供たちに夢を与えている。さらなる貸与の願いをかなえてほしい。もう一度、繁殖という努力をさせてください」
これまでの中国側の好意に感謝した上で、平野はこう切り出した。2018/09に23歳になるメスのタンタンは人間でいうと70歳くらいの高齢で、中国側は妊娠は難しいとの見解を持っており、議論は新しいつがいの貸与が焦点となった。
しかし、中国側の幹部は「パンダは世界中の機関がほしがっており、2頭の貸与を求めても王子動物園はやや不利な立場にある」と、穏やかな口調のなかに厳しい現状認識をにじませた。中国側はこれまでの神戸との交流を評価する一方、王子動物園側の課題を次々と上げていったという。
出席した市議の1人は「新しいパンダどころか、タンタンの延長すら難しいという感触だった。中国側の指摘は心が折れそうなほど厳しかった」と顔をしかめる。
■「一人きり」のタンタン
タンタンは1995年の阪神淡路大震災後、「復興に取り組む人々を励ましてほしい」という神戸市の要望を中国側が受け入れ、2000年に「コウコウ(興興)」とともに10年の貸与契約で来園。飼育研究や繁殖に向けての取り組みが始まった。
パンダの人気は絶大で、2000年度の入場者数は前年度の2倍以上となる約199万人を記録。昨年2017年度も全国の動物園で8位となる約110万人が訪れており、経営の観点でも効果は大きい。
初めての妊娠は7年後の2007年。コウコウは実際にはメスだったとみられ、オスの2代目コウコウに入れ替えるというアクシデントを乗り越え、人工授精で妊娠に成功したが死産。翌2008年には待望の赤ちゃんが誕生したが、わずか3日後に死んだ。さらに2010年には、精子採取のための麻酔中にコウコウが事故死。飼育するパンダはタンタン1頭だけになってしまった。
タンタンは最初の契約の終了後5年間延長する更新を2度行っており、現在の契約は2020年に満期を迎える。こうした状況の中、中国側が課題として指摘したのは、赤ちゃんやオスを死なせてしまった王子動物園の実績だった。
中国側は「王子動物園は繁殖と科学研究の面で能力が低いといえ、飼育体制に足りない点がある。目標に向けた努力を明確にし、もう一歩頑張ってほしい」と言及。契約満期1年前となる2019/06月ごろに、19年間の飼育に関する研究成果をまとめ、今後の展望について盛り込んだ報告書の提出を求めた。
■契約延長明言せず
一方、市議連の訪中の1カ月前、着任の挨拶で中国野生動物保護協会を訪れた王子動物園長の上山裕之の思惑は少し異なっていた。王子動物園はタンタンがまだ出産可能とみており、悲願の繁殖に向けて従来通り、新たなオスの貸与を要望。「もちろんタンタンの契約延長は大前提と考えていた」という。
上山の要望にも、中国側はタンタンの契約延長について明言せず、「あと2年間、(高齢になったタンタンが)健康に生きるための飼育や管理をやってほしい」と返答。市議らに対してと同様、まずは研究成果の総括を最優先するよう指示し、「先のことはその上で検討する」とした。
この場では研究が劣っているとの指摘はなかったが、王子動物園が市議の報告を受けて研究状況を洗い直してみたところ、妊娠や出産が繰り返された時期に比べ、最近では一部の研究しか中国側に報告していなかったことが判明した。
王子動物園は大学と連携し、パンダの加齢に伴う目の病気の対処法や健康管理の方法、発情ホルモンの変化などの独自色のある研究を行い、これまでに十数本の論文を執筆しており、「誤解を解く」(上山)ため1年間かけて成果をまとめる。
上山は「市民の心配の声が大きい。契約延長の確証はなく不安もあるが、前回も延長が正式に決まったのは満期の2日前で、中国側の意思決定はブラックボックスだ。新たな研究も構想しており、まずは中国に認めてもらえるよう今まで以上に努力しなければならない」と力を込める。
■神戸の「パンダ愛」
交渉が一筋縄ではいかない背景には、中国がこれまでパンダを「外交カード」に利用してきたという歴史がある。中国は1950年代から友好の証として他国にパンダを贈呈してきたが、1981年にワシントン条約に加盟すると、共同繁殖研究の名目でレンタル料を取ってつがいを貸与する方式に転換。神戸市は現在、年間25万ドルを中国側に支払っている。
王子動物園によると、中国には野生と飼育を合わせて約2300頭のパンダが生息しているが、こうして貸与されたパンダは18カ国の約60頭だけ。このうち日本は計9頭で、アメリカの12頭に次いで2番目に多いという。
こうしたパンダの「政治性」を逆手に取り、市議連は中国側へのアピールを続けるつもりだ。市議連は中国側との会談でも、神戸と天津が友好都市として提携してから今年で45周年を迎えることなど、中国との歴史的な絆をアピール。2017/07には東京の中国大使館を訪れ、神戸の幼稚園児ら373人が描いたパンダの絵を大使に手渡し、習近平国家主席に絵を見せるよう頼んだ。今後も、自民党上層部に働きかけて政府から中国側に要望を行うよう依頼するという。
神戸市も、2018/07の副市長 寺崎秀俊の中国出張に急遽中国野生動物保護協会への訪問を組み込んだ。寺崎はマンホールにパンダの絵が使われるなど、神戸が街をあげてパンダを愛していることを訴えたという。
市議連会長の平野は「パンダには政治的な判断が大きく絡んでおり、こちらもかなりの戦略を持って臨まなければならない。神戸としてはまず、市民がパンダにどれだけ関心を持ち、大切に思っているかを中国側に理解してもらうことが重要。全市が一丸となって頑張っていきたい」と話した。
神戸から人気のジャイアントパンダがいなくなる、との恐れが渦巻いている。中国側が2年後に貸与期間の満期を迎える神戸市立王子動物園のメス「タンタン(旦旦)」について、契約の延長を明言せず、別のパンダの貸与にも難色を示しているからだ。タンタンは1995年の阪神淡路大震災で被災した神戸に、復興のシンボルとしてやってきた。しかし、その後の相次ぐトラブルなどを口実に、中国側が揺さぶりをかけてきたのだ。中国の「外交カード」ともささやかれるパンダの貸与。その「ディール」(取り引き)を神戸市は成功に導くのか。
■中国に直談判
2018/05/16、中国・北京のホテルの会議室に、日中友好神戸市議連盟会長の平野昌司(自民党)ら神戸市議6人が顔をそろえた。中国野生動物保護協会の幹部らに新たなパンダの貸与を直談判するためだ。
「パンダは子供たちに夢を与えている。さらなる貸与の願いをかなえてほしい。もう一度、繁殖という努力をさせてください」
これまでの中国側の好意に感謝した上で、平野はこう切り出した。2018/09に23歳になるメスのタンタンは人間でいうと70歳くらいの高齢で、中国側は妊娠は難しいとの見解を持っており、議論は新しいつがいの貸与が焦点となった。
しかし、中国側の幹部は「パンダは世界中の機関がほしがっており、2頭の貸与を求めても王子動物園はやや不利な立場にある」と、穏やかな口調のなかに厳しい現状認識をにじませた。中国側はこれまでの神戸との交流を評価する一方、王子動物園側の課題を次々と上げていったという。
出席した市議の1人は「新しいパンダどころか、タンタンの延長すら難しいという感触だった。中国側の指摘は心が折れそうなほど厳しかった」と顔をしかめる。
■「一人きり」のタンタン
タンタンは1995年の阪神淡路大震災後、「復興に取り組む人々を励ましてほしい」という神戸市の要望を中国側が受け入れ、2000年に「コウコウ(興興)」とともに10年の貸与契約で来園。飼育研究や繁殖に向けての取り組みが始まった。
パンダの人気は絶大で、2000年度の入場者数は前年度の2倍以上となる約199万人を記録。昨年2017年度も全国の動物園で8位となる約110万人が訪れており、経営の観点でも効果は大きい。
初めての妊娠は7年後の2007年。コウコウは実際にはメスだったとみられ、オスの2代目コウコウに入れ替えるというアクシデントを乗り越え、人工授精で妊娠に成功したが死産。翌2008年には待望の赤ちゃんが誕生したが、わずか3日後に死んだ。さらに2010年には、精子採取のための麻酔中にコウコウが事故死。飼育するパンダはタンタン1頭だけになってしまった。
タンタンは最初の契約の終了後5年間延長する更新を2度行っており、現在の契約は2020年に満期を迎える。こうした状況の中、中国側が課題として指摘したのは、赤ちゃんやオスを死なせてしまった王子動物園の実績だった。
中国側は「王子動物園は繁殖と科学研究の面で能力が低いといえ、飼育体制に足りない点がある。目標に向けた努力を明確にし、もう一歩頑張ってほしい」と言及。契約満期1年前となる2019/06月ごろに、19年間の飼育に関する研究成果をまとめ、今後の展望について盛り込んだ報告書の提出を求めた。
■契約延長明言せず
一方、市議連の訪中の1カ月前、着任の挨拶で中国野生動物保護協会を訪れた王子動物園長の上山裕之の思惑は少し異なっていた。王子動物園はタンタンがまだ出産可能とみており、悲願の繁殖に向けて従来通り、新たなオスの貸与を要望。「もちろんタンタンの契約延長は大前提と考えていた」という。
上山の要望にも、中国側はタンタンの契約延長について明言せず、「あと2年間、(高齢になったタンタンが)健康に生きるための飼育や管理をやってほしい」と返答。市議らに対してと同様、まずは研究成果の総括を最優先するよう指示し、「先のことはその上で検討する」とした。
この場では研究が劣っているとの指摘はなかったが、王子動物園が市議の報告を受けて研究状況を洗い直してみたところ、妊娠や出産が繰り返された時期に比べ、最近では一部の研究しか中国側に報告していなかったことが判明した。
王子動物園は大学と連携し、パンダの加齢に伴う目の病気の対処法や健康管理の方法、発情ホルモンの変化などの独自色のある研究を行い、これまでに十数本の論文を執筆しており、「誤解を解く」(上山)ため1年間かけて成果をまとめる。
上山は「市民の心配の声が大きい。契約延長の確証はなく不安もあるが、前回も延長が正式に決まったのは満期の2日前で、中国側の意思決定はブラックボックスだ。新たな研究も構想しており、まずは中国に認めてもらえるよう今まで以上に努力しなければならない」と力を込める。
■神戸の「パンダ愛」
交渉が一筋縄ではいかない背景には、中国がこれまでパンダを「外交カード」に利用してきたという歴史がある。中国は1950年代から友好の証として他国にパンダを贈呈してきたが、1981年にワシントン条約に加盟すると、共同繁殖研究の名目でレンタル料を取ってつがいを貸与する方式に転換。神戸市は現在、年間25万ドルを中国側に支払っている。
王子動物園によると、中国には野生と飼育を合わせて約2300頭のパンダが生息しているが、こうして貸与されたパンダは18カ国の約60頭だけ。このうち日本は計9頭で、アメリカの12頭に次いで2番目に多いという。
こうしたパンダの「政治性」を逆手に取り、市議連は中国側へのアピールを続けるつもりだ。市議連は中国側との会談でも、神戸と天津が友好都市として提携してから今年で45周年を迎えることなど、中国との歴史的な絆をアピール。2017/07には東京の中国大使館を訪れ、神戸の幼稚園児ら373人が描いたパンダの絵を大使に手渡し、習近平国家主席に絵を見せるよう頼んだ。今後も、自民党上層部に働きかけて政府から中国側に要望を行うよう依頼するという。
神戸市も、2018/07の副市長 寺崎秀俊の中国出張に急遽中国野生動物保護協会への訪問を組み込んだ。寺崎はマンホールにパンダの絵が使われるなど、神戸が街をあげてパンダを愛していることを訴えたという。
市議連会長の平野は「パンダには政治的な判断が大きく絡んでおり、こちらもかなりの戦略を持って臨まなければならない。神戸としてはまず、市民がパンダにどれだけ関心を持ち、大切に思っているかを中国側に理解してもらうことが重要。全市が一丸となって頑張っていきたい」と話した。
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