Sclaps KOBE
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【復興日本】第1部 震災から見えた危機(1) 幻の第4段階 <MSN産経 2011/05/11 00:19>を編集
2011/03/11の東日本大震災発生から1カ月ほどたったある日。国会内の一室で、内閣官房の官僚が自民党幹部に1枚の資料を示し、説明を始めた。
「わが国の危機管理体制について」
こんな表題がついた資料には「すべての緊急事態」に対処するための政府としてとるべき初動体制が示されていた。初動体制は時間を追うごとに5段階に分かれていた。
(1)緊急事態に関する情報集約
《関係省庁は緊急事態やその可能性を認知したら直ちに内閣情報調査室へ報告する》
(2)緊急参集チームの参集および官邸対策室の設置
《内閣危機管理監は官邸危機管理センターに緊急参集チームを緊急参集させ、官邸対策室を設置する》
(3)関係閣僚の協議
《政府としての基本的対処方針、対処体制等を首相や官房長官が関係閣僚と緊急協議する》
(4)安全保障会議の開催
《武力攻撃事態や重大緊急事態の場合に、国防の基本方針や対処方針について審議する》
(5)対策本部の設置
《政府全体として総合的対処が必要な場合、法令や閣議決定等に基づき、緊急事態に応じた対策本部を迅速に設置する》
自民党幹部は、しばらく4番目の項目を凝視した後、核心を突いた。
「東日本大震災が起きてから、安保会議は一度も開かれていないではないか。なぜだ」
官僚は言い訳を並べ立てた。
「安保会議は、自然災害のときに開くことを念頭にしたものではありません」
「今回は武器を使う事態ではなかったですし…」
「緊急災害対策本部や原子力災害対策本部がすぐ設置されたので…」
それでも自民党幹部は納得せず、資料をたたきながらなお追及した。
「安保会議も緊急事態に開くべきものなのだろ? 資料にはそう書いてあるじゃないか!」
確かに今回の東日本大震災が資料の4番目に記された「重大緊急事態」であることは疑いようがない。官僚答弁がついに本音に変わった。
「開くか開かないかの判断をするのは、最後は首相なので…」
× × ×
安保会議という既存の組織は活用しようとしない菅直人首相だが、新組織の設置にはなぜか熱心だった。
被災者生活支援特別対策本部、原発事故経済被害対応本部、福島原子力発電所事故対策統合本部。泥縄式に組織を乱発させ、気がつけば約20にふくれ上がった。当然、指揮命令系統は混乱し、責任の所在が不明確になった。
2011/05/06になって、法律上の根拠がある緊急災害対策本部と原子力災害対策本部の2つを柱に、他の組織を各本部の下部組織に吸収させた。とはいえ名称変更で済ませたものばかりだ。多くの組織は法令上の根拠がないままで、抜本的な解決がされたわけではない。
その日、首相は緊急の記者会見を開いた。中部電力浜岡原発の稼働停止要請を発表するためだ。
「何といっても、国民の皆様の安全と安心を考えてのことだ。首相として決定した」
「首相の決定」をことさら訴えた首相は記者団から法律上の根拠を聞かれると、「指示とか命令という形は現在の法制度では決まっていない」と説明した。法的根拠のある組織よりも、政治主導で発する決定を優先させる。菅政権の危うい震災・原発対応を象徴する言葉だった。
地震調査委は2011/05/09、M7.4が予想される東京北西部の立川断層の地震発生確率が高まった可能性があると発表。委員で東京大学名誉教授の島崎邦彦も警鐘を鳴らしていた。
「100年後かもしれないが、明日起きてもおかしくない。そうなれば東京は大変なことになる」
× × ×
今回の大地震では、揺れそのものに加え、津波の脅威をまざまざと知らしめた。気象庁によると、震源地から約400km離れた東京・晴海でも1.5mの津波を観測。国土交通省によると、東京湾に注ぐ多摩川や荒川でも上流に逆流する津波が確認された。
東京都知事の石原慎太郎は2011/04/11の記者会見で、「多摩川含めて荒川、隅田川は一種の細い入り江だから。これが津波の吸収源みたいになって甚大な被害が勃発する恐れが十分ある」と危機感を示した。
阪神淡路大震災(M7.3)クラスの地震が都心を直撃したら、経済的損失は東日本大震災をはるかに超える規模になる。中央防災会議の被害想定では、東京湾北部を震源とするM7.3の地震が起きた場合、経済被害は約112兆円に達する。東日本大震災の5倍に相当し、国家予算にも匹敵する。住民やライフラインも深刻な被害を受ける。最悪のケースでは、死者1万1000人、負傷者21万人。ほとんどは建物倒壊と火災が原因で、津波被害は想定されていない。発生直後は断水人口が1100万人、停電は160万軒に達し、避難所生活者は460万人にものぼる。
首都直下地震の被害想定は「一極集中」の弱さを物語っている。
「わが国の危機管理体制について」
こんな表題がついた資料には「すべての緊急事態」に対処するための政府としてとるべき初動体制が示されていた。初動体制は時間を追うごとに5段階に分かれていた。
(1)緊急事態に関する情報集約
《関係省庁は緊急事態やその可能性を認知したら直ちに内閣情報調査室へ報告する》
(2)緊急参集チームの参集および官邸対策室の設置
《内閣危機管理監は官邸危機管理センターに緊急参集チームを緊急参集させ、官邸対策室を設置する》
(3)関係閣僚の協議
《政府としての基本的対処方針、対処体制等を首相や官房長官が関係閣僚と緊急協議する》
(4)安全保障会議の開催
《武力攻撃事態や重大緊急事態の場合に、国防の基本方針や対処方針について審議する》
(5)対策本部の設置
《政府全体として総合的対処が必要な場合、法令や閣議決定等に基づき、緊急事態に応じた対策本部を迅速に設置する》
自民党幹部は、しばらく4番目の項目を凝視した後、核心を突いた。
「東日本大震災が起きてから、安保会議は一度も開かれていないではないか。なぜだ」
官僚は言い訳を並べ立てた。
「安保会議は、自然災害のときに開くことを念頭にしたものではありません」
「今回は武器を使う事態ではなかったですし…」
「緊急災害対策本部や原子力災害対策本部がすぐ設置されたので…」
それでも自民党幹部は納得せず、資料をたたきながらなお追及した。
「安保会議も緊急事態に開くべきものなのだろ? 資料にはそう書いてあるじゃないか!」
確かに今回の東日本大震災が資料の4番目に記された「重大緊急事態」であることは疑いようがない。官僚答弁がついに本音に変わった。
「開くか開かないかの判断をするのは、最後は首相なので…」
× × ×
安保会議という既存の組織は活用しようとしない菅直人首相だが、新組織の設置にはなぜか熱心だった。
被災者生活支援特別対策本部、原発事故経済被害対応本部、福島原子力発電所事故対策統合本部。泥縄式に組織を乱発させ、気がつけば約20にふくれ上がった。当然、指揮命令系統は混乱し、責任の所在が不明確になった。
2011/05/06になって、法律上の根拠がある緊急災害対策本部と原子力災害対策本部の2つを柱に、他の組織を各本部の下部組織に吸収させた。とはいえ名称変更で済ませたものばかりだ。多くの組織は法令上の根拠がないままで、抜本的な解決がされたわけではない。
その日、首相は緊急の記者会見を開いた。中部電力浜岡原発の稼働停止要請を発表するためだ。
「何といっても、国民の皆様の安全と安心を考えてのことだ。首相として決定した」
「首相の決定」をことさら訴えた首相は記者団から法律上の根拠を聞かれると、「指示とか命令という形は現在の法制度では決まっていない」と説明した。法的根拠のある組織よりも、政治主導で発する決定を優先させる。菅政権の危うい震災・原発対応を象徴する言葉だった。
地震調査委は2011/05/09、M7.4が予想される東京北西部の立川断層の地震発生確率が高まった可能性があると発表。委員で東京大学名誉教授の島崎邦彦も警鐘を鳴らしていた。
「100年後かもしれないが、明日起きてもおかしくない。そうなれば東京は大変なことになる」
× × ×
今回の大地震では、揺れそのものに加え、津波の脅威をまざまざと知らしめた。気象庁によると、震源地から約400km離れた東京・晴海でも1.5mの津波を観測。国土交通省によると、東京湾に注ぐ多摩川や荒川でも上流に逆流する津波が確認された。
東京都知事の石原慎太郎は2011/04/11の記者会見で、「多摩川含めて荒川、隅田川は一種の細い入り江だから。これが津波の吸収源みたいになって甚大な被害が勃発する恐れが十分ある」と危機感を示した。
阪神淡路大震災(M7.3)クラスの地震が都心を直撃したら、経済的損失は東日本大震災をはるかに超える規模になる。中央防災会議の被害想定では、東京湾北部を震源とするM7.3の地震が起きた場合、経済被害は約112兆円に達する。東日本大震災の5倍に相当し、国家予算にも匹敵する。住民やライフラインも深刻な被害を受ける。最悪のケースでは、死者1万1000人、負傷者21万人。ほとんどは建物倒壊と火災が原因で、津波被害は想定されていない。発生直後は断水人口が1100万人、停電は160万軒に達し、避難所生活者は460万人にものぼる。
首都直下地震の被害想定は「一極集中」の弱さを物語っている。
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