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【吉井英勝議員会見】想定外の原発事故は数年前から想定されていた <2011/05/20 10:30 BLOGOS編集部>を添削

【吉井英勝議員会見】想定外の原発事故は数年前から想定されていた

京都大学工学部原子核工学科出身で、政界でも数少ない原子力専門家の吉井議員。今回の原発事故が起こる以前から、国会質問で福島原発の危険性を訴え、事故後は「福島原発事故を予見していた」と話題になった。政府・東電・マスメディアは吉井議員の指摘を無視し、対策を怠り、最悪の「人災」を引き起こしてしまった。その無念と、政府の責任について語った。
【取材・構成:田野幸伸(BLOGOS編集部)】

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今回の原発事故をしっかり「想定」し、国会質問で何度も追求してきた吉井議員。もう「想定外」という言い訳は通用しない。
福島原発は建設コストを下げるために山を削って低いところに建設された、老朽化した原発の健全性の試験はされたことがない・・・

今回の福島第一原発の事故は、明らかに「人災」である。
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■想定外では済まされない

吉井:まず、今回の福島原発事故をどう規定するか。地震、津波は自然現象だが、福島原発事故は明確に人災。これを人災と見るか想定外と見るかは決定的に大事な問題。最初、東京電力や菅総理は 想定外の地震だったと口にした。

2007年の新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発は3500箇所を超える装置・機器が損傷した。あの時も、想定外の地震だったと言った。何かあると「想定外」と言う。そんなに簡単に「想定外」という考え方をしてはいけない。事故の可能性があると、2005年以降、何度も国会で質問してきた、なぜ対応してこなかったのか。誤りを認め、海江田経済産業大臣が、今後「想定外」という言葉は使わないようにすると2011/04初めに言った。しかし、2011/04/13の会見、東京電力の清水社長は「想定外」が使えなくなったので、「想定外の津波」と言葉を変えてきた。

「想定外」と言う言葉をなぜ使いたがるかと言うと、これは「天変地異」だと、東京電力には責任がないと、言いたいために使う。だからこそ、今回の原発事故は「人災」。これをきちんとさせておきたい。

■2つの「人災」

今回は2つの人災があった。1つ目の人災。2004年スマトラ沖で起きた大津波の被害、あれと同じ巨大地震が日本の老朽化した原発を襲ったらどうする、検証が必要ではないかと国会で質問した。

もともと、日本には四国の香川県多度津に大型振動台・試験台があった。これは原発の安全性を計る機械だったが、新品の実験のみで、 老朽化した原発の実験はしていなかった。老朽化した原発設備も、ちゃんと検査するべきではと訴えてきた。そして、10年ほど前に、原子力安全委員長は老朽した機器の健全性の実証は必要だと認めた。その後5年ほどして、試験データはあるのか?と改めて聞いたが、まだやってないのでデータはないという回答。

試験はやらなくてはならなかったのだが、小泉政権時代にEディフェンスという新しい実験施設を作った事に伴い、310億円かけて作ったこの大型振動台はたった2億7000万円で造船会社に売却されてしまった。買い取った造船会社は、振動台をスクラップにして売ってしまった。なので、健全性を検査する装置が今、日本にはない。新しい実験施設は、新品の機器なら検査できる。しかし、老朽化した原発機器は放射能を帯びているので、放射線管理区域でないと、試験できない。多度津の試験場を使用中の原発の試験場にして、チェックできていれば、福島の老朽化した原発施設が地震に耐えられるかどうか、知っておくことが出来た。

津波には押し波と引き波がある。波が引くと言うことは、(海面が下がるから)原子炉が停止したときに、核燃料を冷やす機器冷却系ポンプが海水を取り込めなくなる。鉄塔が倒壊するなどの事故で、外部からの電源がとまると、機器冷却系が働かなくなる。合わせて内部電源も今回の津波のように失われると、原子炉が空焚き状態になる。そうしたら、炉心溶融が起きるじゃないかと、昨年原子力安全保安委員長に質問した。「論理的にはそうなります」と答えた。認めていた。彼らは、メルトダウンが起こるようなことはない。起こらない設計や、構造になっていると言っていた。委員長は、外部電源がダメでも内部電源がある。内部電源がなくなったら、隣で動いている別の原発から電源をもらえばいい、大丈夫だと不思議なことを言っていた。そんなわけにいくはずもなく、今回のような事故が起きた。何度も何度も国会で危険性を指摘していたのに、対応してこなかった。これは人災である。

2つ目の人災は、地震の後、40分あまりで津波が来た、津波によって電源がすべて失われた。全電源喪失と言う状態で炉心溶融が起きてしまった。このとき、東京電力はどんなことをしてでも食い止めなければいけなかった。圧力を抜くベントや海水を注入してでも温度を下げることが大切だったのに、海水を入れると廃炉になってしまうので躊躇した。減価償却が終わって、動かせば動かすほど儲かる「金の卵」の原子炉を儲け第一主義で捨てられなかった。廃炉にして、株主代表訴訟が起きることを恐れた。経営者の個人的思惑もあった。

政府は東京電力を守るのが役目ではなく、国民の安全や財産に責任を持つのが役目だ。総理はただちに原子力災害特別措置法に基づいて、ベントも海水注入も命じることが出来た。決断をするべきだった。

おととい、女川原発の調査に行ってきた。女川原発も福島原発と震度も津波の規模も同程度だった。原子炉の中の温度は(停止後に)約10時間で、100度以下になった。

地震や津波の対応をしてこなかった前政権(自民党)、原発事故後対応を誤った現政権(民主党)の責任は重い。

今回の福島原発の事故、ポンプを動かす機器冷却系に外部から電気をもらうための鉄塔が地震で崩れてしまった。これで外部電源が失われた。津波が想定外と東京電力清水社長が言っていたが、仮に、想定外の津波で内部電源が破壊されても、想定内の地震で鉄塔が無事ならば、事故は起こらなかった。女川原発も、津波でディーゼル発電機が破損した。女川原発の2号機には1500トンの海水が入っていた。津波の被害は同じように受け、5箇所から受けていた外部電源の内、3箇所やられ、1箇所は点検中、かろうじて1箇所だけ無事だった。そのおかげで、機器冷却系を動かすことが出来た。そういう点でいかに、東京電力が対策をしていなかったか、政府が対策をさせなかったのか浮き彫りになった。今回の事故は人災だったと言う事だ。

浜岡原発の停止も、停止とはいったが、やめるとは言っていない。日本は地震列島。アメリカは地震のない地域に原発を作っている。フランスやドイツはそもそも地震が起こらない地域。地震地帯に原発を作る国は世界中でも珍しい。日本が原発に依存し続けるわけには行かない。エネルギー政策の転換が必要だ。

■質疑応答

Q:マスメディアの報道について、どう考えているか?

A:海外メディアの方に取材を受けるときに、「なぜ東京電力や、政府は情報隠しをやるのですか?」と聞かれる。結論から言うと、原発利益共同体が作られているから。これが最大の問題。原発利益共同体とは、まず東京電力の地域独占。原発のコストは全て電気代の原価に乗せられるという法制度。原発促進税も取れる。電力会社というのは、原発にいくらかかろうと困らない仕組みになっている。そして、原子炉を作る三菱重工、東芝、日立。どこの原発をどの企業が作るかは最初から決まっている。付帯工事は鹿島建設をはじめとする大手ゼネコン。もし国の仕事をどこがやるとかあらかじめ決めると、談合罪で手が後ろに回るが、民間企業だから最初からスーパー談合が行われる。原発というのは、鉄とコンクリートの塊。新日本製鉄とか、セメント会社とか、素材供給メーカーが儲かる。

原発の建設にはだいたい10年かかる。資金調達するのはメガバンク。銀行にとっては、不良債権になる心配も無く、金利収入がしっかり入ってくるおいしい仕事。この仕事のために、各企業は政治家に献金する。お金や労働組合から票をもらった政治家は官僚に圧力をかける。「原発推進のためにこういう制度、法律を作りなさい、予算を組みなさい」と。それを受けて官僚は仕事をする。官僚はお金を貰うと賄賂になってしまうので、天下りという名の汚職の先物取引を受け取る。そして、財界、政党、官僚から学会へ研究費用が出る。東京電力や電気事業者連合会から宣伝費として、マスメディアが潤う。自治体は立地交付金という麻薬のようなお金がもらえる。これがなくなると困るから、「原発は安全です、どんな事故があっても5重の壁があります」と原発安全神話を振りまいてきた。この話を海外のメディアにしたら、「東京電力は旧ソ連と同じ社会じゃないか」と驚いていた。

Q:メルトダウンしているということは、新たに核分裂反応が起きているのでは?

A:再臨界については危険を感じている。制御棒がどういう状況になっているかによっては、核分裂反応が再び起こる可能性はあると思っている。ただ、現状どうなっているかの基礎的なデータが公開されないと、「こうだ」と決め付けられない。なので、慎重に判断して行きたい。

Q:"想定外"について。あらゆる状況を想定して原発を建設した場合、火力発電や水力発電と比べて、コストはどうなのか。

A:今回のような事故が起きた時の社会的負担コストは全く考慮されていない。そういうコストを入れると、原発は遥かに高くなってしまう。高台に原発を作れば、というのがある。女川原発は元々20m以上の高台に作られている。福島原発はわざわざ、山を削って低くした。なぜかというと、建設時に固い地盤まで基礎を打つのだが、土地を低くしてから打ったほうが安くできる。建設コストを安くするために、低いところに作った。基の地盤でやっていれば、ひょっとすると事故は防げたかもしれない。

Q:廃炉のコストはどれくらいか計算できるか? 原発の発電コストに廃炉費用は含まれているのか?

A:原発のコストを安く見せるために、様々な仕掛けを作ってきた。廃棄物処理の問題もほとんど考えられてこなかった。電源開発促進税も年間3500億ほど電気代に乗せられている。これも原発コストだ。それを考えれば、「原発は安い」とはならない。償却期間を何年にするか、稼働率をどうするか、出してくる数字もバラバラ。政府は安く見せたコストを出してきているが、根拠は示されていない。

Q:現時点で計算すると、いくらくらいの発電コストになるのか?

A:正確なデータを出してこないので、はっきりとは分からないが、再処理工場のコスト19兆円なども入れると2倍以上になると、個人的には考えている。

Q:福島第一原発の事故収束に対する政府の取り組みで最も懸念する点、評価する点は?

A:東京電力に工程表を作らせた。この工程表の評価をしっかりやらなくてはいけない。それには、基礎的データが必要。原発は元々ブラックボックス、様々なデータを見て、初めて今どういう状況か分かる。そのパラメーターもなしに、分かるわけがない。最初の地震の第一撃で何が破損したのか、それをどう修復するのか、それも分かっていない。たとえば、地震動のデータが出てこない。女川が576.5ガル、設計の基準地震動を超えていた。原発竪穴の上のほうでは2000ガルを超えていた。2007年の中越地震での柏崎刈羽原発事故でも2000ガルを越えた場所もあった。それで3500箇所の被害が出た。どれくらいの被害かを確認することが必要、女川原発が現時点で600~700箇所の破損。東京電力はそもそも、被害状況を明らかにしていない。なので、工程表を評価しようがない。政府は少なくとも、データを東電に出させて評価し、国民に説明する必要がある。

Q:津波の対策をすれば原発は大丈夫という風潮があるが、地震で福島原発も壊れていたのでは?

A:地震の第一撃、そして余震でどれくらい被害が出たか、東京電力はデータを出してこない。使用済み燃料プールは無事なのか心配している。昔、福島第二原発のプールではデーター隠しも行われた。あれから年数もたち、老朽化もしている。あそこが大丈夫かどうかを政府はしっかり調査しなければいけない。

Q:京大の原子核工学科を卒業されていますが、そういった専門家の議員は数少ない。現政権からもし入閣を打診されたらどうする

A:菅政権は元々、自民党時代よりも原発推進だった。原発を海外に輸出しようとしていた。根本的に政策が違う。いくらなんでも「想定外」だ。菅さんが浜岡原発を停止させた事は当然だと思う。しかし、堤防を作って再び稼動させようとするでしょう。砂を盛って堤防を作っても、液状化するわけで、これは支持できない。今後、エネルギー政策をどうするかを見て、協力できるものはするし、原発を進めるなら賛成はできない。

Q:危ない所に立地しているもの、老朽化した原発を止めていって、原発がなくなるのに何年かかるか

A:再生可能エネルギーを爆発的に普及させるための舵切りの決断で変わって来る。日本における再生可能エネルギーの物理的限界発電量は12兆Kw/時。今の日本の発電量が9000kw/時。12~3倍の可能性がある。
イメージしやすく言うと、メガソーラー発電は1000キロ平方で、1000億Kw/時の発電量。1000キロ平方という面積は、日本中の米軍基地面積と同じ。仮に、米軍基地を全て撤収してもらって、太陽光発電施設にすれば、柏崎刈羽原発1号機~7号機の2年分の発電力になる。
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