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神戸に関連する/しない新聞記事をスクラップ。神戸の鉄ちゃんのブログは分離しました。人名は全て敬称略が原則。

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イラストは Record China から。http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=49977
「中国の対日外交を読み解く:カギは「網民」の民意」

2011年3月14日(月)
日本「加油!」(頑張れ!)に燃える中国網民と対日外交

■ 中国ネット空間に溢れる日本地震へのエール

 2011/03/11午後、東北地方の太平洋沿岸で観測史上最大となるマグニチュード8.8(後に9.0)の巨大地震と津波が発生すると、中国の中央電視台(中央テレビ局、CCTV)は素早く反応した。

 それを知ったのは、中国の知人や教え子から電話やメールが数多く来たからだ。夜になると、「中央電視台は多くの通常番組を取り止めにして専ら日本の地震と津波を集中的に放映している。中国人民の日本人民に対する関心の高さと哀悼を日本人民に伝えてほしい」というメールが入るようになった。

 その日は私自身、地震の対応に追われ、中国メディアの動きを追跡するゆとりがなかったが、翌2011/03/12、CCTVをつけてみて驚いた。午前中はニュース番組の「新聞頭条(ヘッドライン)」として8.8級地震を扱い、延々30分の時間を割いていた。北京では年1回だけ開かれる中国の最高決定機関である「全国人民代表大会(全人代=国会)」が「中国政治協商会議全国委員会(全国政協)」とともに開催されている真っ最中だ。この2つを合わせて「両会」と称し、会期中はすべてのニュースを圧倒して優先する。ところがCCTVは、日本の地震に関するニュースを、その両会ニュースより前に放映したのである。

 2011/03/12の夕方になると日本時間の19時(北京時間の18時)から、CCTV国際頻道(チャンネル)の「中国新聞」という番組が「日本大地震」という1時間の特集を組んだ。22時になると、キャスターを変えて、再び「日本大地震」を特集。

 ハッとして中国大陸のネット空間にアクセスした。

 するとどうだろう。 「日本加油(ジャー・ユウ)!」(日本頑張れ!)のエールがあふれているではないか。

 もちろん「鉄血社区」(社区:コミュニティ)のような反日色が濃厚なサイトでは「実に素晴らしい! 10級くらいの地震が東京を襲うともっといいのに」といった悪意に満ちたものがないではない。それはどの時代でも、どの国でもあることだろう。注目すべきは、「日本加油!」という書き込みの数がそれらをはるかに凌駕していることだ。

 2011/03/12で以下のようなものがある。

●その昔、確かに日本は戦争を仕掛けてきた。しかし中国の(四川)地震の時には真っ先に駆けつけてくれたではないか。今度は日本で大地震があったというのに、無責任な書き込みをして、気分がいいのか。
●そういうことをする者は人間ではない。
●もし中日戦争が起きたら私は鉄砲をかついで最前線で闘う。しかし、もし日本人民が災難に遭ったら、私は担架をかついで、やはり最前線で助ける。
●いいぞ! その通りだ! 中国人はまさにそういう気概を持たなくちゃ。
●私は日本の民衆の精神を信じる。頑張れ、日本!
●頑張れ日本! どうか踏ん張ってくれ!
●10万人の援助隊を組んで日本に派遣することを強烈に提案する!
●中国は多くの献金をすべきだ。
●(地震で)被害を受けた人々に哀悼の意を表し、生き残った人々が強く頑張ってくれることを祈る。
●家屋の耐震能力のなんと高いこと。
●それにしても、原発はやはり安全じゃないねぇ。
●中国の小学校は(四川地震において)真っ先に倒壊した。でも日本では小学校が避難所になる。

 こういった書き込みが何十万、何百万と続く。
 それなら今、中国の対日政策は、どのようになっているのだろうか。

■ 楊潔篪・外交部長が表明した2011年の対日外交方針

 その両会の流れの中で、楊潔篪・外交部長(外相)は2011/03/07、人民大会堂で記者会見を行った。楊潔篪は、中国外交にとっての2010年を「挑戦と進取の1年」と位置付け、強硬路線を取ったことに対する反省をにじませた。その上で、2011年は国際社会との協力を強化し、日中関係も改善する方向であることを明らかにした。
 日中外交に関する要点は以下のいくつかの項目に分類することができる。

1.中日関係が両国国民に実質的なメリットをもたらすようにする。
 まずは両国の国民感情を改善すること。そのためには両国関係発展の正しい方向性を明確にして、両国の国民が、中日関係が良くなると、どういうメリットがあるかを互いに実感できるようにする。またデリケートな問題(東シナ海油田開発問題、尖閣諸島問題など)に関してよく管理統制し、対立や意見の不一致が激化しないようにしなければならない。また人的交流を増やせば、そういった社会的基礎を築けるだろう。

2.2011年は中日関係を改善し推進する重要な1年である。
 最近、日本の指導者は中日関係に関して積極的に情報を発信するようになり、双方の戦略的な高い観点から中日の互恵関係に当たりたいという希望を表明するようになった。中国側は喜んで日本側と高いレベルの接触を維持強化し、互いの信頼を推進したいと望んでいる。

3.東シナ海を「友好の海」にするために百の理由がある。
 中国側は、東シナ海を「平和と協力と友好の海」にするには百の理由があると思っている。日中両国が東シナ海問題の原則に関して交わしたコンセンサス(日本語では「“戦略的互恵関係”の包括的推進に関する日中共同声明」)には、いかなる変化もない。ただ、皆さんもご存じの原因により、東シナ海問題の原則のコンセンサスはいくつかの曲折に出くわした。我々は中日双方が両国の戦略的互恵関係という大局から出発して、デリケートな問題を適切に処理し、東シナ海問題の原則に関するコンセンサスを実現するために良好な条件と雰囲気を創り上げていかなければならない。

4.釣魚島(尖閣諸島)問題は慎重に対処し、中日関係の大局を見失わないようにする。
 釣魚島に関する中国政府の立場は一貫している。この問題は非常にデリケートだ。必ず慎重に処理しなければならない。我々は既に何度も日本側に、あのような事件が二度と起きないよう何としても防止し、両国関係の大局を守るように強く要求してきた。

5.(前原外相の辞任に関し)誰が日本の外相になろうと良好な関係を保っていきたい。
 私は前原外相とは何度も接触し話し合ってきた。我々は中日の戦略的互恵関係を改善し推進することに関して、一定のコンセンサスを得ている。誰が後任になろうとも私は日本の外相と良好な関係を保ち、両国の指導者が中日関係推進に関する一連の重要なコンセンサスを貫徹することを望んでいる。
おおむね以上の趣旨である。

■ 中国の姿勢が変わった点、変わらない点

 1.に関して注目すべきは、「すべての責任は日本側にある」という2010年の主張とかなり変化しているという点だ。「デリケートな問題に関して…対立や意見の不一致が激化しないようにしなければならない」として、主語は特に設定していない。これは即ち、主語は日中双方の国だと言っているのに等しく、「中国も気をつけるよ」という含意がある。

 人的交流は確かに双方の国民に相手の国の実態をストレートに見せつけ、それまでの認識が間違っていたことを教えてくれる。コソボ紛争における中国大使館誤爆の時には、激しく燃え上がった反米デモの中心人物をアメリカに招き国民感情を改善したというアメリカの例もある。

 2.に関しては、本連載の最初に書いた日中会談における日本側の涙ぐましい努力を、中国は一応は評価したということになろうか。

 しかし4.を見ると、「我々は…を日本に何度も要求してきた」とあり、やはり2010年の尖閣問題を惹起したのは日本側にあるという観点は崩してないことが分かる。

 ということは、日中関係改善に力を注ぎたいと望みながらも、「日本はああいうことを二度と起こさないようにしてよね」と言っているわけだ。

 3.はまさに、2010年11月から始めた本連載の第1回目「苦悩する日中首脳会談」で書いた内容を指す。そこでは「胡錦濤のトラウマ」というフレーズを用いて、楊外交部長が表現した「いくつかの曲折」を説明した。これをどう乗り越えるのか。網民の声をどのように抑え込むのか、あるいは説得するのだろうか。

■ 痛いところを突く中国高官のコメント

 外交部部長のメッセージに対する網民の声をネットに求めることは困難なので、私は知人でもある中国政府高官にコメントを求めた。2011/03/08のことである。

 あまりにデリケートな問題なので、さすがに回答を拒むかと思ったが、むしろ積極的に答えてくれた。回答は以下の通り。

(1)楊外交部長の発言は、日中関係に対する中国政府の非常に積極的な姿勢を表現している。2011/05に温家宝 総理(首相)と王岐山 副総理が中日経済ハイレベル会談に出席する。これは2010年の釣魚島問題発生以降、中国首脳による初めての「日本」との談話のための訪日となる。

 2010/11の胡錦濤 国家主席の訪日は、あくまでもアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席するためであって、もしこれが「日中間」の会談であったなら出席したかどうかは疑わしい。釣魚島事件発生来、日本との会話のために訪日した中国指導層はいなかったことに気がつく必要がある。その意味で2011/05の訪日は特別の意味を持つ。楊外交部長の発言の裏付けとして重要視しなければならない。

(2)楊外交部長は東シナ海の友好的かつ平和的共同開発には「百の理由」があると述べている。これがどれほど強いメッセージであるかを深く認識してほしい。

(3)私が心配するのは、むしろ日本の執政党(与党)と政府指導層の不安定さである。かつて温家宝 首相が訪日したときに鳩山(元)首相は、ほぼ上の空という印象を中国国民に与えた。それを証拠づけるように温家宝 首相が帰国した直後に鳩山氏は首相を辞任している。今も、政権の不安定は間断なく続いている。

 特に日本外相の、まるで「走馬灯」のような交代には驚きを禁じ得ない。こんなことで国際社会における信用を得ることができるとでも思っているのだろうか。安定した国策を発信することもできなければ、それまで日本が培ってきた外交のノウハウさえ引き継がれていないように感じる。だから中国との2国間で安定して続いてきた暗黙のルールを平気で突如覆すような言動を繰り返す。これは東アジアの安定を乱すだけでなく、国際社会全体に悪影響をもたらす。

(4)特に前原(前)外相の責任は大きい。釣魚島漁船衝突事件に関しても、それまでの自民党だったら、どうしただろうか。あのような強硬なことはしなかったと思う。あれは中国政府にとっては大きな打撃となった。おまけに一転して釈放。中国の網民(ネット市民=ネットユーザー)は喜んだだろうが、その一貫性のなさは中国政府に対してさえ、一種の違和感を与えた。前原くみ易しという声も一部には上がったほどだ。

(5)中国政府は日本が思っている以上に民意を重視している。何といっても4.5億を越える網民がいる。中国の少なからぬ国民は、日本政府の不安定さと指導層の交代を望んではいない。

(6)なぜなら日本には「外交の軸」がないと、我々には映るからだ。これは現在の政権党(民主党)の未熟さによるものだと思われる。しかしこれは日本の「弱体化」として国際社会に映る。深刻なのは、この「外交軸のあいまいさと揺れ」が、結果的に日中両国関係と国民感情の悪化を惹起しているということだ。日本の執政党は、このことに気がつかねばならない。

 私はこの回答に圧倒された。
 何とまあ、痛いところを突いた、インパクトのあるコメントだろう。

■ 地震を境に変わった網民の論調

 それでは網民は、日本の政局に対してどのような感想を持っていたのだろうか。「捜狐(SOHU)」中国最大の検索サイト「百度」の掲示板「百度貼吧」を「日本外相 前原 辞任」というキーワードで検索した。2011/03/07の時点の書き込みから例をいくつかを拾ってみよう。

●彼の外交はあんなに失敗している。韓国の独島(竹島)、ロシアの北方四島そして中国の釣魚島だろ。そのどれもうまく処理できなかった。今度は朝鮮だって? 外交は全部ダメってことじゃないか。
●辞職したのは20万円とは無関係だろ? 政権内部の闘争なんじゃないの? 密告したのは身内(民主党内部)じゃないか?
●いやいや。彼はもっと強かだよ。このドサクサに紛れて(力のない内閣から)身を引き、後で再び出馬しようっていう計算だよ。
●実際、この菅直人内閣は日本人に対する信用を徹底的に奪ってしまったよな。国内外ともにハチャメチャだ。だからすべてのアジア人からバカにされる羽目になった。日本も没落したものだよ(日落西山)。もう既に徹底して潰れてしまったも同然だ。これも日本の政権の選択なんだから、まあ、どうしようもないけど。背後にはアメリカがいたんじゃないの?
●前原が下野したのは、日本人にとっては良いことだよ。だって少なくとも戦争の可能性(中国が日本に戦争を仕掛ける可能性)は減ったのだから。
●中日関係を壊した人間の行く末はこんなものさ。
●いや、喜ぶのは早いかもしれないぜ。ひょっとしたらいつか、首相として現れるかもしれないんだから。
●それにしても朝鮮の女性の力はすごいね。わずか5万円で日本の大臣を退陣に追いやったんだから。
●20万円って、人民元で言うと、どれくらいになるの?
●1万5000元くらいじゃない?
●えっ? それっぽっち? 中国じゃ、20の後にゼロが2つくらいはつくだろう?
●そうだよ。中国から見れば彼は「清官」(清廉潔白な官吏)。
●みんな日本に行こうぜ。だって官を動かすのに、たったこんなはした金ですむんだから。

 この話題に関する書き込みは、地震が発生するまではネット空間を熱く埋めていた。前原(前)外相の退陣劇に関しては、中央電視台が重要ニュースとして大々的に報道し、特集番組まで組んだほどだ。

 ところが、その中央電視台に、ある変化が起きた。
 地震の翌日である2011/03/12午前中に放映されたニュース番組の中でのことである。

 美人のニュースキャスターがわずかに唇をゆがめ「今回の大地震は日本の菅内閣にさらなる打撃を与えているんじゃないですか?」と日本特派員に聞いた。

 その誘い込むような質問に対して特派員の若い女性は「いえ、いま日本はそれどころではありません。全員が一丸となって、ただひたすら地震の救援に燃えています」と答えたのだ。

 美人キャスターは「ん!」と絶句するように表情を固くした。
 それ以降、「菅政権にダメージを与えたでしょ?」という期待感を込めた質問はテレビから消えた。

 ネット空間も同じだ。
 百度検索でヒットした「小日本に8.8級の地震が発生したことを熱烈に祝賀する!」という項目をクリックすると「このページを表示することはできません」というメッセージがあった。政府当局が削除した痕跡だ。

■ 尖閣諸島に国際援助隊の設置を

 日ごろから親しくしている東大の安冨教授が、本連載の記事を読んでくれて、昨年、面白いメールを寄こしていた。「日中韓などの東アジア諸国が尖閣列島などの係争地に災害援助のための国際援助隊を設置してはどうか」という意見だ。実に素晴らしいアイディアだ。

 網民の約60%は30歳以下の若者たち。愛国主義教育を受け、また「尖閣諸島は中国固有の領土である」と教えられてきた。その領土に対して日本人が権利を主張するというのは絶対に許されない侵略行為だと本気で思っている者が多い。

 しかし被災の救助となると、突然見方が変わってくる。人類共通のモラルに立っていることが冒頭に列挙した書き込みからも窺われる。四川大地震のために派遣された日本の自衛隊が、犠牲者を前に全員で黙とうを捧げた姿は中国の民衆の中に深い感動を呼び起こした。

 楊外交部長は、東シナ海や黄海を「平和、協力、友好の海」にしようと呼び掛けている。そこから得られる利潤があるとすれば、それを国際救助隊設立と救助支援体制整備のための資金にすることに、中国も韓国も文句は言わないだろう。災害で陸路や水路が閉ざされても空路ならかなりの救助活動ができる。空からの消火活動の技術を高め、そのために経費を注ぐといい。

 中国のネット空間では日本の危機管理能力を高く評価する声が多い。ここまでの大きな規模の災害であるなら、ふつうなら数万、あるいは数十万の犠牲者がいてもおかしくないところだと日本を絶賛している。中国は日本に学ぶべきだという声もある。日本が示した危機管理のノウハウを東アジア諸国で共有して互いに協力し合うのは非常に有意義なことだ。

 特に中国は福島原発事故に関しても強い関心を示している。
 港町である大連で世界最大規模と言われている大型原発を建設中だからだ。従って今回のような巨大地震や大津波に対する安全対策は他人事ではないのである。ただ、個人的な意見を言わせていただくならば、少なくとも福島原発事故に関しては、情報の開示が遅く、何かモタモタしていると感じた。関係者の情報の共有と、緊密な連携に基づく管理システムの一本化が必要なのではないかと思われる。

 中国の温家宝首相もロシアのプーチン首相も、あらゆる利害を越えて日本に対し哀悼の意を表している。中国網民の対日感情にも変化が見られた。ここにこそ、我々が学ぶべき教訓と可能性があるのではないだろうか。

~~~~
 最後の ■ 尖閣諸島に国際援助隊の設置を の部分だけは載せたくありませんでした。
 あの地は(領土問題の範疇に入らない)日本固有の領土です。そもそも、あの島も津波に丸のみされる可能性がありますよ?
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