Sclaps KOBE
神戸に関連する/しない新聞記事をスクラップ。神戸の鉄ちゃんのブログは分離しました。人名は全て敬称略が原則。
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週刊・上杉隆【第145回】 2010/10/14
検察3つの“公然の秘密”――「ストーリー捜査」
「虚偽の自白」「リーク」が、ついに白日の下へ
http://diamond.jp/articles/-/9715
皮肉なこともあるものだ。
大阪地検特捜部の検事らによる証拠捏造事件は、これまで一貫して否定されてきた検察内部の「公然の秘密」を焙り出す結果になってしまった。
郵便割引不正事件で証拠となるフロッピーディスクを改竄した前田恒彦検事の犯した事件は、現時点で、さらに上司2人の逮捕者を出すという組織的な犯行を疑わせる内容に発展している。
皮肉というのは、現時点で逮捕された3人の検事が、揃って検察内部の矛盾を暴露し始めたことにある。それによって、これまで否定されてきた3つの事柄が、「事実」であることがわかってしまったのだ。
語るに落ちた彼らの証言をいったいどう考えればいいのか。
もはやそれはブラックジョークの域に達し、笑うしかないほどである。だが、記者クラブメディアが大きく報じないので一般には知られていない。
今回、本コラムでは、ついに暴かれた3つの「公然の秘密」を改めて検証する。
地検検事の逮捕は
最高検が作ったストーリー?
まずは「検察ストーリー」の有無である。
これまで、検察は「法と証拠」に照らして、起こった事件(事実)のみを捜査の対象にしてきたと豪語してきた。だが、その「嘘」はいとも簡単に破られた。
〈大坪前特捜部長と佐賀前副部長は、面会した弁護士に、「『意図的ではなく、誤って書き換えてしまった』と報告を受けた。自分たちは最高検の作ったストーリーによって逮捕された」などと話し、最高検と全面的に対決する姿勢を示しています〉(NHKニュース/2010/10/12)
検察が、自作のストーリーを元に捜査してきたことを、この2人の検事が認めるどころか、そのストーリーの正当性を完全否定した上で、批判の対象としているのである。
これを笑い話と言わずしてなんといえばいいのか。
この2人の検事の発言によって、きっと、これまで「検察ストーリー」の正当性を主張してきたメディアも、相当に困惑しているにちがいない。
実際、評論家の立花隆などは、次のような苦し紛れの論を展開するほどである。
〈この事件の一番の背景として、検察の捜査が「初めにストーリーありき」になっていることを挙げる人もいるが、私はそうは思わない。
初めに「ストーリーを作る」あるいは「筋を読む」ことは捜査の基本中の基本であり、そこを否定したらそもそも捜査は成り立たない。捜査だけではない。あらゆるサイエンスが、ストーリーを作ることから始まる。サイエンスは裸の事実観察をただ並べることではない。
そこに、あるストーリーを持ち込む、すなわち仮説を作ることがサイエンスの最初の一歩である〉(信濃毎日新聞/2010/10/03付)
サイエンスの話になってしまうと、もはや、何をかいわんやである。
取り調べを受ける側になったら
急に録音・録画を要求!
次に、捜査可視化の不要論が崩れ去った発言についてみてみよう。朝日新聞は次のように報じている。
〈大阪地検特捜部の主任検事による証拠改竄を隠したとして犯人隠避容疑で逮捕された前副部長・佐賀元明(49)の弁護人が、取調べの全過程を録音・録画するよう求めていたのに対し、最高検は応じない方針を決めた。「この事件で録音・録画の予定はまったくない。これまでは取り調べる側にいた検事が、最初の適用例になるのもおかしい」としている。
佐賀前副部長の弁護人は4日、「密室での違法・不当な取調べによる虚偽の自白で、多くの冤罪が生み出されてきた」として、最高検に「全面可視化」を求めていた。申入れは佐賀前副部長の意向も踏まえたという〉(朝日新聞/2010/10/06ウェブ版)
虚偽の自白強要を断固として否定してきた検察(検事)が、今度は虚偽の自白を恐れて可視化を求める。なんとシュールな構図だろう。
だが、これは夢でもなんでもない。本当にこの世で起きている現象なのだ。
不思議なことに、この驚くべき記事の扱いは小さい。どの新聞も社会面の端に載せている程度だ。
おそらく、検事による可視化の要求は、検察のみならず、記者クラブメディアにとっても自己否定につながるからであろう。検察による虚偽の自白の存在を認めれば、発表に基づいた過去の新聞記事全体の信頼性も失ってしまう。それだけはなんとしても避けなければならない。きっと、そんな計算が働いたのだろう。
そして、3つめのブラックジョークは、当のメディアに対して起きたことでもある。
接見を禁止すると、新聞・テレビは
「最高検リーク」記事で溢れかえる?
これまで記者クラブメディアは一貫して、「検察リーク」の存在を否定してきた。読売新聞や産経新聞などは、わざわざ社会部長名で記事にまでしている。
だが、いよいよ、その欺瞞の隠蔽にも限界が近づいたようだ。
各紙が小さく報じた次の記事は、見方を変えてみれば、検察リークの存在を裁判所が認定したということがいえるだろう。
〈郵便不正を巡る証拠品のフロッピーディスク(FD)改竄に関連した犯人隠避事件で、最高検が大阪地検の前特捜部長・大坪弘道(57)、前副部長・佐賀元明(49)の接見禁止を求めたところ、大阪地裁が却下したことがわかった。否認している容疑者について接見禁止の申し立てが退けられるのは異例。2人に対しての接見は弁護人以外も可能な状態となっている。
刑事訴訟法では、接見禁止は容疑者に証拠隠滅の恐れがある場合、裁判所が検察官の請求や職権で処分することができる、と規定されている。弁護人は接見禁止の対象とならない〉(読売新聞関西版2010/10/05付)
つまり、接見禁止が続けば、「検察リーク」によって、一方的に偏った記事が世間に溢れることになる。それを恐れた被疑者と、不信に思った裁判所がこうした決定を下したといえるのではないか。
実際、この二人の検事が接見禁止解除になった直後に面会したのは、共同通信と時事通信の記者である。その後も、各種メディアとの接見を続けている。
こうした行為を「検察リーク」への対抗手段とみるのは穿ちすぎだろうか。
いずれにしろ、これまで検察が否定してきた「公然の秘密」は、同僚の検事によって暴かれた。
検察もマスコミも、このブラックジョークを真剣に受け止める時期にきていることを直視すべきではないか。
検察3つの“公然の秘密”――「ストーリー捜査」
「虚偽の自白」「リーク」が、ついに白日の下へ
http://diamond.jp/articles/-/9715
皮肉なこともあるものだ。
大阪地検特捜部の検事らによる証拠捏造事件は、これまで一貫して否定されてきた検察内部の「公然の秘密」を焙り出す結果になってしまった。
郵便割引不正事件で証拠となるフロッピーディスクを改竄した前田恒彦検事の犯した事件は、現時点で、さらに上司2人の逮捕者を出すという組織的な犯行を疑わせる内容に発展している。
皮肉というのは、現時点で逮捕された3人の検事が、揃って検察内部の矛盾を暴露し始めたことにある。それによって、これまで否定されてきた3つの事柄が、「事実」であることがわかってしまったのだ。
語るに落ちた彼らの証言をいったいどう考えればいいのか。
もはやそれはブラックジョークの域に達し、笑うしかないほどである。だが、記者クラブメディアが大きく報じないので一般には知られていない。
今回、本コラムでは、ついに暴かれた3つの「公然の秘密」を改めて検証する。
地検検事の逮捕は
最高検が作ったストーリー?
まずは「検察ストーリー」の有無である。
これまで、検察は「法と証拠」に照らして、起こった事件(事実)のみを捜査の対象にしてきたと豪語してきた。だが、その「嘘」はいとも簡単に破られた。
〈大坪前特捜部長と佐賀前副部長は、面会した弁護士に、「『意図的ではなく、誤って書き換えてしまった』と報告を受けた。自分たちは最高検の作ったストーリーによって逮捕された」などと話し、最高検と全面的に対決する姿勢を示しています〉(NHKニュース/2010/10/12)
検察が、自作のストーリーを元に捜査してきたことを、この2人の検事が認めるどころか、そのストーリーの正当性を完全否定した上で、批判の対象としているのである。
これを笑い話と言わずしてなんといえばいいのか。
この2人の検事の発言によって、きっと、これまで「検察ストーリー」の正当性を主張してきたメディアも、相当に困惑しているにちがいない。
実際、評論家の立花隆などは、次のような苦し紛れの論を展開するほどである。
〈この事件の一番の背景として、検察の捜査が「初めにストーリーありき」になっていることを挙げる人もいるが、私はそうは思わない。
初めに「ストーリーを作る」あるいは「筋を読む」ことは捜査の基本中の基本であり、そこを否定したらそもそも捜査は成り立たない。捜査だけではない。あらゆるサイエンスが、ストーリーを作ることから始まる。サイエンスは裸の事実観察をただ並べることではない。
そこに、あるストーリーを持ち込む、すなわち仮説を作ることがサイエンスの最初の一歩である〉(信濃毎日新聞/2010/10/03付)
サイエンスの話になってしまうと、もはや、何をかいわんやである。
取り調べを受ける側になったら
急に録音・録画を要求!
次に、捜査可視化の不要論が崩れ去った発言についてみてみよう。朝日新聞は次のように報じている。
〈大阪地検特捜部の主任検事による証拠改竄を隠したとして犯人隠避容疑で逮捕された前副部長・佐賀元明(49)の弁護人が、取調べの全過程を録音・録画するよう求めていたのに対し、最高検は応じない方針を決めた。「この事件で録音・録画の予定はまったくない。これまでは取り調べる側にいた検事が、最初の適用例になるのもおかしい」としている。
佐賀前副部長の弁護人は4日、「密室での違法・不当な取調べによる虚偽の自白で、多くの冤罪が生み出されてきた」として、最高検に「全面可視化」を求めていた。申入れは佐賀前副部長の意向も踏まえたという〉(朝日新聞/2010/10/06ウェブ版)
虚偽の自白強要を断固として否定してきた検察(検事)が、今度は虚偽の自白を恐れて可視化を求める。なんとシュールな構図だろう。
だが、これは夢でもなんでもない。本当にこの世で起きている現象なのだ。
不思議なことに、この驚くべき記事の扱いは小さい。どの新聞も社会面の端に載せている程度だ。
おそらく、検事による可視化の要求は、検察のみならず、記者クラブメディアにとっても自己否定につながるからであろう。検察による虚偽の自白の存在を認めれば、発表に基づいた過去の新聞記事全体の信頼性も失ってしまう。それだけはなんとしても避けなければならない。きっと、そんな計算が働いたのだろう。
そして、3つめのブラックジョークは、当のメディアに対して起きたことでもある。
接見を禁止すると、新聞・テレビは
「最高検リーク」記事で溢れかえる?
これまで記者クラブメディアは一貫して、「検察リーク」の存在を否定してきた。読売新聞や産経新聞などは、わざわざ社会部長名で記事にまでしている。
だが、いよいよ、その欺瞞の隠蔽にも限界が近づいたようだ。
各紙が小さく報じた次の記事は、見方を変えてみれば、検察リークの存在を裁判所が認定したということがいえるだろう。
〈郵便不正を巡る証拠品のフロッピーディスク(FD)改竄に関連した犯人隠避事件で、最高検が大阪地検の前特捜部長・大坪弘道(57)、前副部長・佐賀元明(49)の接見禁止を求めたところ、大阪地裁が却下したことがわかった。否認している容疑者について接見禁止の申し立てが退けられるのは異例。2人に対しての接見は弁護人以外も可能な状態となっている。
刑事訴訟法では、接見禁止は容疑者に証拠隠滅の恐れがある場合、裁判所が検察官の請求や職権で処分することができる、と規定されている。弁護人は接見禁止の対象とならない〉(読売新聞関西版2010/10/05付)
つまり、接見禁止が続けば、「検察リーク」によって、一方的に偏った記事が世間に溢れることになる。それを恐れた被疑者と、不信に思った裁判所がこうした決定を下したといえるのではないか。
実際、この二人の検事が接見禁止解除になった直後に面会したのは、共同通信と時事通信の記者である。その後も、各種メディアとの接見を続けている。
こうした行為を「検察リーク」への対抗手段とみるのは穿ちすぎだろうか。
いずれにしろ、これまで検察が否定してきた「公然の秘密」は、同僚の検事によって暴かれた。
検察もマスコミも、このブラックジョークを真剣に受け止める時期にきていることを直視すべきではないか。
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